1975年にセントラルアメリカンヨーヨーが日本で誕生しました。時を同じく玩具メーカーのTOMYからウォーターゲームが誕生し当時の子供たちから人気を得ていました。現在40代~50代の方なら1度は遊んだことがあるウォーターゲーム。実はこのゲームこそがスノードームの進化(?)したカタチだったようです。本企画は当時を知らない世代の5人のプロフェッショナルと鈴木裕之が昭和(70年代)への思いや受け継がれている事などを語ります。
第三回は 日本スノードーム協会 井上さんです。
鈴木氏が協会に飾られているスノードームを見ながら
鈴木:子供のころから気にはなっていました。手にしたこともあるし・・・ただ正直に言うと・・・よくわからないです。そもそも、スノードームのブランド(メーカー)は日本に存在しますか?
井上:残念ながらありません。
鈴木:では、こちらに並んでいるスノードームは殆どが海外ブランドなのですね。
井上:昔は日本にも職人がいて作っていたと聞いています。ただスノードームは皆さんが思われているより製造にコストが掛かり手間もかかるんです。製造の最後がどうしても手作業になってしまうんです。
水を詰めてパッキンを詰めて接着という。構造的にゴムパッキンの上に台座が乗って、台座の上にフィギュアが乗っていて、最後に「カポッ」と嵌めます。機械では出来ないんです。
鈴木:いいですね。物って出来上がるまでの工程に手間がかかるほど愛着が沸きます。
井上:私もそこに惹かれました。
鈴木:すみません、失礼な言い方になってしまいますが、協会があったんですね、驚きました。
井上:いえいえ(笑)
鈴木:日本スノードーム協会はいつにスタートしたのですか?
井上:2006年です。現在は私の父が館長を努めておりますが、もともと作家の百瀬広道さんが個人的に集めていたものを「美術館として展示しよう」ということで百瀬さんの周りの人たちが立ち上げたものなんです。その百瀬さんもイラストレータの安西水丸さんにスノードームを教えてもらって集め始めた様です。
ここにその水丸さんのコレクションもあります。初代名誉館長です。
鈴木:なるほど、ゆくゆくは井上さんも?館長になるんですね。
井上:どうでしょう?(笑)
鈴木:すみません、質問攻めになってしまうのですが、スノードームの発祥はどこですか?
井上:発祥はヨーロッパだと言われています。また、記録として残っているのは1878年のパリ万博で
スノードームらしきものがあったと言われています。ちゃんと文献に残っています。
ただし、それより前にもペーパーウェイトとして作られてはいたようなのですが・・・ちゃんと記録に残っているのはパリ万博で、エッフェル塔のスノードームがお土産で売られていたそうです。
鈴木:「スノードーム」という名称は世界共通ですか?
井上: 「スノードーム」「スノーグローブ」と両方使われていて、海外では結構スノーグローブの方がよく使われていますね。日本ではスノードームの方がメジャーですね。
司会:日本スノードーム協会の主な活動を教えてください。
井上:ワークショップの実施とコレクションの展示、インストラクターの育成ですね。
日曜日にはご家族やご友人グループなどを対象としたスノードーム作りワークショップも行っています。
鈴木さんも是非。ついでにヨーヨーの技も披露してください。
鈴木:楽しそうですね。ヨーヨーはやりません。(笑)
司会:ちなみに、その様な情報は何を見れば・・・?
井上:ホームページと、チラシですね。
司会:今年場所を移られるとお聞きしたのですが、そちらでも同じようなことをされますか?
井上:そうなんです。横浜に移ります。そちらでも同じ活動を続けていきます。
鈴木:ちなみにスノードーム作りワークショップですが、お子さんでも簡単にできるものなんですか?
井上:はい、2時間くらいで出来ます。ワークショップで作っていただくのは、水を入れるタイプではありません。弊館で開発したキットを使っていただきます。下からモチーフを差し込むタイプなので。
どなたでも簡単に出来ます。写真参照
鈴木:これですか・・・なるほどキレイですね。あれ?水の中に入れると中身は大きく見えるんですね。
井上:そうですね、1.5倍くらいに見えますね。
鈴木:これは子供にもウケますね。
鈴木:私が子供の頃、水の中で輪投げするゲーム?があったのを覚えているのですが、あれってスノードームの一種なんですか?
井上:空気を送って水の中で輪を動かし遊ぶゲームですね、一応そうなります。雪じゃないだけで。インターチェンジやホテルなど様々な場所で販売されていましたが、見なくなってしまいましたね。
鈴木:そうそうそうそうなんですよ。そういうところで売ってたので、輪投げのやつとか懐かしい!
何回もやりました。
井上:その様な遊べるギミックが付いたスノードームもコレクションであります。
鈴木:先ほど水の中のフィギアは小さいと言われてましたが・・・ あの輪・・・凄い小さいってことですね。
井上:そうです、だから難しいんですよね。
鈴木:という事は・・・ボールペンもありますよね?あれもスノードームの仲間になるんですか
井上: そうです、フローティングペンですよね。腕時計型のおもちゃもありますね。
鈴木: ボールペンはいまだにハワイとかのお土産でありますよね。そう考えると、ずっとどこかで携わってきたんですね。
井上: そうですね、みなさん郷愁を誘うというか。来館されるお客様も小さいときの思い出とダブることが多いと言われます。
司会:調べたところによると、1975年にTOMY社から販売されたようです。
鈴木:お~。セントラルアメリカンヨーヨーとほぼ同い年ですね。
井上:そうなんですか!凄い偶然ですね。あっ、それが分かっていた上での対談でしたか?
鈴木:いえ、すみません。そこは知りませんでした。本当にヨーヨーと同じように知名度はあるけど深くは知られていない玩具。歴史もありコレクション性もある・・・共通点が多いので単純に興味を持っていました。
井上:今度私にもヨーヨーの事教えてください。
司会:話を少し戻しましょう。協会についてもう1つ質問させてください。来館されるお客様から多く受ける質問とは?
井上: そうですね・・・よく聞かれるのは一番古いスノードームはいつ頃の物ですか?とか、日本では作ってないですか?とか。あとは気泡というかスノードーム内の水が減ってしまうのはしょうがないんですか?という質問はよく受けますね。
鈴木:水減るんですね・・・。そうか・・・。減ったらどうすれば?
井上:うちの協会では、どうしても経年で、気泡って正直気温差でも出たり消えたりするものなので。それと少しずつ蒸発してしまうので、それだけ同じ時間過ごしたってことで、エンジェルリングって当館では呼んでいるのですが、不良品とか思わないで可愛がって欲しいなという。
鈴木: 後から水足したり・・・出来ますか?
井上:出来ることもあります。メーカーによって規格が違うの出来たり出来なかったり。プラスチックのものはほぼ出来ないと思っていただいた方がいいです。
鈴木:そうなんですね。
井上:プラスチック製は、半円というか楕円みたいな形で出来ている物が多いのですが、それらは下止めする時に熱で溶かし止めている事が多いので、外してもう一回水をいれて止めると言うことが出来ません。
鈴木:素朴な質問です。スノードームの中の雪?ですがあれは白しかないのですか?
井上:ラメとか、カラーのフレークが入ってることもあります。きれいですよ。きれいと言えばPERZY社のスノードームは雪がすごくゆっくり落ちるので、幻想的でいつまでも眺めていられます。
鈴木:ブランドにより違うのですか?
井上:そうですね。形も違いますし、それぞれデザインコンセプトも違います。例えば台湾のメーカーだとフィギアの顔が可愛いです。感覚がアジアなんです。カナダ製は海外っぽい顔だなーってなるんですけど。PERZYさんは素朴な感じです。あとオルゴールがついてるのもあります。ちなみにPERZYさんは付けないスタンスです。
鈴木:雪が奇麗に舞うのは、フレークの形とかで変わるんですか?
井上:そうですね。ほとんど水にグリセリンを混ぜて作っているのでゆっくり舞うようにできているのですが、私も聞いて驚いたのですがPERZYさんは水に混ぜ物なしで作っています。ただのお水に雪これだけ舞うのすごいんですよ。アルプスの雪解け水100%らしいです。雪にだけ工夫をしていますということです。
普通は水に粘りを出してゆっくり舞わせるんですけど、ここはお水だけなのに雪の滞空時間が長い。
鈴木:水だけだと直ぐ落ちちゃうんだ・・・。
井上:なので雪の作り方は社外秘というか、一子相伝ということになってるらしいです。
普通ラメも固まることもあるんですが、ここはそういうことが少ないですね。
鈴木:という事は・・・一番メジャーなブランドは?
井上:やはり「PERZY社」ですね。オーストリアのブランドです。
鈴木:先ほどいくつかブランド名出てきましたが、オーストリア以外で有名なメーカーはありますか?
井上:カナダの「Twinkle社」、あと新しいブランドですがアメリカの「Cool Snow Globes 社」ですね。
司会:最後の質問です。今回の企画は、鈴木氏がアンティークのヨーヨーを復活させて、「古き良き時代に触れてみよう」という事です。井上さんも歴史のあるスノードームに携わっていますが「古き良き時代」と聞いて感じるものはありますか?
井上:スノードームもアンティークの市場はあります。スノードームは古い物ほど水が減っている事が多いです。ただ、マイナスにならないというか・・・それが(水が減ることが)リアルなので、100年前とか7~80年前のものにも当時のお水が残っていることに価値があると言われています。それも魅了の1つです。
鈴木: やはり古いものを見て、集めてみたくなったとか、欲しくなったという人は一定数いるわけですね
井上:そうですね 例えばお土産で「買った」「貰った」スノードーム。みなさんお水がなくなっても手元に置いときたいとう方が多いのです。わかるな~って思いますね。思い出と共に・・・ですね。
鈴木: 最後にアピールすることってありますか?
井上:デジタルと真反対でアナログの極致にあるものなので、この時代に是非手元に置いて欲しいなと思いますね。
鈴木:今日はありがとうございました。
井上:また遊びに来てください。